4-6-(2)-(2) 「国境の島」対馬の人びとのくらし P.135-139

対馬は,長崎県の北部に位置し,まわりを海に囲まれ(かこまれ),山々が海岸までせまり,平地がほとんどありません。
人びとは,このような土地をどのように生かして生活しているのでしょうか,調べてみましょう。

土地利用状況(とちりようじょうきょう)(令和2年度農林水産統計年報)(単位%)

対馬の仕事別の人口(平成28~29年農林水産統計年報)

対馬の農林水産業の生産額(単位:百万円)
対馬地方局編集「つしま百科」から(平成24年)(2012)
生産額の表からもわかるように対馬では,水産業が島の生活をささえる大事な仕事です。
①漁場(ぎょじょう)のようす
対馬のまわりの海は,昔からたくさんの種類の魚が集まるところとして有名です。人びとは,近くの海でたくさんの魚をとることができるのです。
それには,潮(しお)の流れや海底(かいてい)の地形などいろいろなわけがあります。そのわけをみんなで力を合わせて,調べてみましょう。

対馬でとれる海産物
② 対馬のまわりでとれる水産物

対馬のまわりでとれる魚は,季節によってもちがいます。
春にブリが釣れるところで,夏はタイが釣れたりします。対馬で一番とれるイカは季節によって種類がちがいますが,一年中とれます。
また、海岸には磯瀬(いそせ)が多く、ウニ、アワビ、サザエ、ヒジキ、ワカメなどが穫れ(とれ)ますが、
最近対馬西海岸の大部分では「磯焼け(いそやけ)」という現象(げんしょう)がおきています。「磯焼け」とは、ウニやアワビのエサとなる海藻(かいそう)が生えなくなってしまうことです。
原因(げんいん)は調査中(ちょうさちゅう)ですが、まだはっきりとはわかっていません。この磯焼け現象を少しでも
食い止めるため、対馬では人工的に海藻が生えるようにする取り組みを行っています。

「磯やけ」が起きた海底
③魚のとり方
魚が近くの海でとれる対馬では,小型の漁船(ぎょせん)が多く見られます。どのような魚のとり方をしているのでしょうか。
対馬で一番さかんなのは,イカ釣りですが,飼付漁(かいつけりょう)というブリをとるめずらしいとり方があります。それは,どういうとり方なのか厳原町漁協(いづはらまちぎょきょう)の人に,たずねてみました。

集魚灯によるイカ漁(りょう)

飼付漁(かいつけりょう)のようす
飼付漁は,いつもきまった場所,きまった時間にまき餌(え)をし,魚をならします。時期が来たら,まき餌と一緒に釣り糸をたらし,ブリなどの魚を一本釣りで釣り上げるのです。
このとり方は,昭和6年鹿児島県から伝わったといわれています。
みなさんも,対馬の人びとは,どのようなとり方で,どんな魚をとっているのかくわしく調べてみましょう。
とれたばかりの魚
④ 育てる漁業のようす
対馬では育てる漁業もさかんです。ふくざつな入り江が多い浅茅湾(あそうわん)を中心に「真じゅ」「タイ」「ハマチ」などの養しょくをしています。浅茅湾は複雑な入り江が多いため,風や波のえいきょうを受けにくいため養しょくにてきしています。

漁業生産額 令和2年漁港港勢調査(対馬市ホームページより)
————–養しょくのいろいろ————–

ハマチ

タイ

真じゅ
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——————-養しょく業のおじさんの話——————-
浅茅湾(あそうわん)は,タイやハマチの養しょくにとても適(てき)しています。稚魚(ちぎょ)から育てたハマチは,2年から3年で,近くは福岡,遠いところでは大阪などに送ります。
大きく育った魚を,本土まで送るのに,費用(ひよう)がかかるわりには,高く売れないというなやみがあります。そこで,最近はマグロやトラフグなど,ねだんの高い魚の養しょくが,さかんに行われるようになってきました。
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——————-真じゅ養しょく場で働く人の話—————‐—
対馬の海は温かいので,冬でも水温が12度以下には下がりません。だから,1年中同じ場所であこや貝を育てることができます。
山が多いことも真じゅ養しょくと関係があります。山の養分が海に流れ込み,あこや貝のエサとなるプランクトンが多く発生するからです。
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養しょくのようすや育てた魚の送り方などについても,くわしく調べてみましょう。
⑤これからの対馬を考える
対馬の人びとは,自然環境や地形をうまく利用して漁業をしています。
これからも対馬の漁業がますます発展(はってん)していくためには,どんなことを考えればよいのでしょうか。
——————-県漁連のおじさんの話——————-
これまでの漁業のやり方では,魚や貝などが減る(へる)いっぽうです。そこで,栽培漁業(さいばいぎょぎょう)にも力を入れていきたいと考えています。卵から育てた稚貝(ちがい)や稚魚(ちぎょ)を,海に帰し大きくなってからとるのです。
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対馬栽培漁業センター
栽培漁業についても,くわしく調べてみましょう。
○ 韓国(大陸)との交流


厳原港祭り(いづはらみなとまつり)
大陸に近い対馬では,韓国や中国と魚のとり方などが問題になり,これまでにも話し合いが何度も行われてきました。
対馬の人びとは,わずか49.5キロメートルしかはなれていない韓国の人びとと,これからも仲よくしていくにはどうすればよいか,しんけんに考えています。みなさんも話し合ってみましょう。